社会主義と共産主義の違い

動画【5分で世界史】

こんにちは。Naganomayuiです。
私は高校教員でしたので、
YouTubeで、【5分で世界史】という動画を作っています。


世界史って、受験生が苦労する科目のひとつだと思います。
覚えることが多すぎるし、
範囲は全然終わらないし。

教える立場からしても、
「早く範囲を終わらせなきゃ・・・!」
という焦りが、常にありました。


でも、難しい概念が出てきたら、
いちから説明しないといけないし・・・。
「ごめん、あとは質問して!!!」
みたいなことも多かったです。
申し訳なかった・・・。


ですから今は、
受験生や先生方の手助けになりたくて、動画を作っています。

その動画の第一弾が、この
「社会主義と共産主義の違い」


だって、生徒みんな言うんですもん。
「結局何がどう違うんですか」
「もう意味わかりません」

だよねー。わかるわぁ。

動画はこちら。5分程度で見られます。

【5分で世界史】社会主義と共産主義の違いが、結局わからない人向け解説



このページでは、動画の流れに添いながらも
もう少し本格的に、
世界史を理解するための、根本的な考え方をお伝えしたいと思います。

世界史を理解するのに必須な、2つの考え方


まずはいきなり、
世界史を理解するための考え方を2つ、
ご紹介します。

  • 人はすべてを、区別で認識する
  • 区別が必要かどうかは、自分で判断できる


どういう事かというと、
「これはいつの時代もこういう意味!」
みたいなものなんて、存在しない

ってことです。

これから、順序立てて、
社会主義と共産主義を説明しますが、

この用語ってのは、
時代によって、意味が全然違うんです。

ですから、

  • 人はすべてを、区別で認識する
  • 区別が必要かどうかは、自分で判断できる

この視点を持って、見てみてくださいね。


では、どうぞ ↓

①資本主義の問題→社会主義の登場

まず、
「資本主義が問題だよね」ってところから、話は始まります。

・・・が、
「資本主義ってそもそも何だっけ」
って人も多いでしょうね。


資本主義の「資本」っていうのは、
生産手段」のことです。

何か事業を始めるための元手、ですね。
金もそうですし、土地とかも資本です。
とりあえず今回は金だと思いましょうか。


資本主義社会は、
そんな資本=生産手段を持つ人たちが、

労働者を雇用して利潤を追求し、

さらに資本を増やす、

というシステムで回る社会です。

今の世の中と同じです。


でも資本主義社会は、いくつかの問題を抱えています。

①格差

事業で手に入れた利潤は、ほとんどが資本家のものになります。

初期の資本主義社会には、
最低労働賃金なんてものもありませんから、

利益を追求するために、
労働者の給料はどんどん削られて、
資本家との差が広がっていきました。


②労働状況

現在の労働者は、社会保険や有給や労働基準法などで、手厚く守られています。

しかし初期の資本主義社会では、

・ほとんど休みなしで働かせたり、
・職場や寄宿舎の環境が劣悪だったり、
・小さな子供を働かせたりと、

労働条件が非常に悪かったんですね。



これらが、代表的な問題点です。


そんな厳しい労働者の現状を見て、
「格差のない社会」
っていうのを考え始めた人
たちがいます。

彼らは社会主義者って呼ばれます。

でもこの頃の社会主義ってのは、
まだまだ洗練されてないのです。


どんなことでも
「どうしたら良くなるだろう」
って考えるときは、
現状をよく分析すべきですよね。

テストで今40点ならば、
「テストの傾向がこうで、でも自分の勉強法はこうで・・・」
って分析して、改善策を考えます。


「今の社会主義には、現状の分析が足りない。
私がそれをやりましょう」

そう言って登場した人物がいます。

社会主義は、ここから大きく変わります。

②今までの社会主義者を批判する、マルクスの登場

カール・マルクス
マルクス
マルクス

今の社会主義には、現状の分析が足りない。
私がそれをやりましょう。

そう言って登場したのがカール・マルクス
現状の資本主義を科学的に分析します。

そして、

マルクス
マルクス

歴史を分析した結果、
そのうち絶対に社会主義革命が起こるだろう

とか言うわけです。


マルクスは、これまでの社会主義者たちのことを、めちゃくちゃ批判しています。
「空想的社会主義者」とか言ってます。
分析もせず、空想ばっかやってる、ってことですね。

彼らと区別して、自分のことは
「科学的社会主義者」と呼んでいます。



実際、マルクスの考えは他の誰とも違って
非常に画期的でした。

多くの人が、マルクスの考えに熱中し、
社会主義の中でも特に「マルクス主義」と呼んで、熱心に勉強します。


その後の社会主義者は、基本的に、
マルクスの考え方に影響を受けている

と思って良いです。



つまり、マルクスが登場したことで、
「社会主義」の意味が大きく変わる
のです。

③議会のなかで活躍する、社会主義者たち

その後の社会主義者たちは、
「社会党」や「労働党」などの政党を作り、
議会で活躍を始めます

この頃は、いろんな国で議会が発展していく時代です。
選挙権が拡大すると、お金を持たない労働者も、選挙権を持つようになります。


労働者たちは、選挙で
自分たちの立場を守ってくれる、
「社会党」や「労働党」に投票します。

すると、
「社会党」や「労働党」の議席が増えます。

そうしたら社会主義者たちは、
議会のなかで、労働者たちの地位向上を
目指し始める
わけです。


つまり彼らは、
資本主義とうまく付き合いながら、
ゆっくり変えていけばいいね

に方針転換していくのです。


特に第一次世界大戦がはじまると、
社会主義者は、
「いろんな国の社会主義者と協力して、革命を目指そう!」
とか言ってる場合じゃなくなります。

だって、国の議会で活躍してるのに、
自分の国が負けたら大変だから。

だから、自国の利益を追求するようになっていくのです。


つまり、のちの時代の社会主義者たちは、
マルクスの影響を受けてはいるけれど、
時代に合わせて、考えを少し変えていく、というわけです。

④「革命」を起こしたレーニンの「共産党」

第一次世界大戦の頃の社会主義者たちは、
「資本主義のなかで、ゆっくり労働者の権利をあげていこう」
という活動をしています。

マルクスが予言した「革命」を目指す人は、
少なくなっていきます。


ところが。
それを批判して、革命を自力で起こしちゃった人がいます。

それが、レーニンです。
(跡を継いだスターリンも
ついでに覚えておきましょう。)

レーニンとスターリン


レーニンは、マルクスの教えに戻って
ロシアで革命を起こします。
そして、
「社会党でも労働党でもないぞ」という意味で、「共産党」というのをつくります


ここで
「お、マルクスが言ってた革命が、ついに起きたんだな
じゃあこの時作られたソ連ってのは、
マルクスが言ってた理想社会なのかな

・・・って思ったら大間違いですよ


マルクスはね、

マルクス
マルクス

資本主義が発展したら、
自然と社会主義革命が起こるだろう

って言ったんです。

でもこの時のロシアって、2月に帝政が倒れたばっかりです。
これまでは、皇帝に支配されていたから、
資本主義もほとんど浸透してないんです。


簡単に言うと、早すぎるわけです。


そんな中レーニンは、
無理矢理に革命を起こしちゃってます。

でも、
資本主義の「し」の字も知らない人々に、
社会主義って、理解されると思います?

当然、無理です。

だから結局、ロシアは
共産党の一党独裁体制に進んでいくのです。


レーニン率いるロシアは、周辺にある小国と連合して、
共産党が一党独裁をおこなう、
「ソヴィエト連邦」をつくります。


正式名
ソヴィエト社会主義共和国連邦


社会主義って名前が入っていますね。
そう、社会主義国の誕生です。


はい、ここが、受験生最大の混乱ポイント。


『共産主義国じゃないのかよ。』


いいですか。レーニンはこう考えます。

レーニン
レーニン

私は完全理想の共産主義を目指す。
社会主義っていうのはその途中段階だ
まだ理想じゃない

共産主義の目指す理想の状態ってのは、
国が管理しなくても、
みんなで平等に暮らせる社会です。

でもソ連は国(連邦国家)です。

・・・。

国が管理しなくてもいい理想の社会を作るために、国を作る・・・。

矛盾ですね。


「共産主義国」って言葉は、矛盾になっちゃうんです。

だから、共産主義を掲げているけれども、
共産主義国とは言えない
わけです。

レーニン
レーニン

だから我が国は、
まだ途中です」っていう意味で、
社会主義国と名乗ろう

レーニンは、共産主義の前段階が社会主義、ってことにしたんですね。

つまり、ソ連は
「共産主義を目指す、社会主義国」
って感じでしょうか。



ただ、歴代のソ連の総書記が、
皆そういうことを考えてたかは、微妙です。


次のスターリンからして、
レーニンの考えと違いますから。



レーニンは、世界革命を目指していました。

レーニン
レーニン

ロシアとその周辺だけは社会主義国にできた。

でも、理想は、
国が全部なくなること。

どうすればいいんですかね。

レーニン
レーニン

他の国でも革命を起こして、全部を社会主義国にしよう。
そして、みんなで国を無くそう!



でもスターリンは違います。
彼は、一国社会主義を唱えます。

スターリン
スターリン

もう外に広めなくても、
ソ連一国だけ、社会主義として成功すれば良くない?

ってことです。

そう思った場合、
ソ連という国を発展・継続させることが
主目的になりますよね。

⑤冷戦中、ソ連を中心に共産主義陣営ができる

ロシア革命後、
ソ連の影響で、各国に共産党ができます。


これらも国によって実態は様々です。

・ソ連のように、共産党が力を持って、
社会主義国となった国

・資本主義の国の議会に混ざって、
格差を減らしていこうとした国

さまざまです。



冷戦時代には、社会主義国の多くが、ソ連と連携します。
でも、この頃のソ連は、
「世界革命のため」っていう理想100%で動いてるわけじゃありません。



だって、この頃のソ連の指導者って、スターリンだから。

スターリン
スターリン

もう外に広めなくても、
ソ連一国だけ、社会主義として成功すれば良くない?

こんな感じだから。



実際は、
世界の中でソ連がうまくやっていくために、
社会主義陣営を広げようとしています。


だから、
ソ連スタイル(共産党一党独裁体制)
=「マルクスの唱えた社会主義」


っていうのは間違いなのです。


・・・まあでも、人類は、
ソ連型以外の社会主義国を知らない
ので、

「社会主義って、ソ連みたいな感じなんでしょ」
って勘違いしがちなのです。



だから、
冷戦が終結して、ソ連が崩壊した時も
「社会主義は間違いだったわね」
みたいな考え方が、世界に広がることになります。


今は、社会主義と共産主義は
そんなに真剣に区別されてないですね。
特に冷戦後は。


世界史では、冷戦集結までをちゃんと区別すれば、問題ないと思います。

歴史を理解するポイント:「区別」を大事にする

さて、社会主義と共産主義の流れを、
順に確認しました。

同じ名前でも、時代によって、
色々な意味合いがある
ことがわかります。


これを踏まえ、歴史を見ていくのに、重要な視点を解説します。

2点、お伝えしていましたよね。

  • 人はすべてを、区別で認識する
  • 区別が必要かどうかは、自分で判断できる

どういうことか、順番に説明します。

人はすべてを、区別で認識する

人間は、新しいものを見たときに、
すでに知ってるものを脳内で検索して、
目の前のものとの「共通点」と「違い」を
探し始めます。

例えば、この絵を見てください。
これはなんですか?


「鳥」と答えた人は、
この絵に描かれたモノは、犬とかトカゲとかとは「違う」な、と思ったわけです。
だから、それらと区別して、「鳥」と答えたのでしょう。


鳥について詳しい人は、
「ツバメ」と答えられたかもしれません。

そういう人は、ニワトリとかスズメとかを思い浮かべたんでしょう。
それらとは「違う」ので
区別して、「ツバメ」と答えたわけです。


一方、「鳥」と答えた人にとっては、
ニワトリもスズメもツバメも、「ほぼ同じ」です。
共通点をまとめて、同じカテゴリに分類します。


どちらも、正しいのですよ?

どのカテゴリで分類するのか、が違うだけです。



人間のものの見方は、基本的にこの判断の連続です。


※これは実は、高一の国語でやる、
言語論」というものです。
興味が出てきたら、国語の先生に聞いてみてください。
あるいは、この本がわかりやすいので、オススメです。

『ことばと文化』鈴木孝夫(Amazon)




ですから、正直、社会主義も共産主義も
「似たもの」とくくってしまっても、問題なかったりします


ある人は
「だいたい同じ」って言いますし、
ある人は
「全然違う」って言います。

別に、どっちも間違いじゃないです。
あの絵を、ツバメって言うか、鳥って言うかの違いです。



ただ、世界史を勉強する以上、「違い」を見つけた方がいいわけです。



ここまで、大丈夫でしょうか?



では、ふたつめのポイントです。

区別が必要かどうかは、自分で判断できる


これは、視点の転換です。

だいたい、今の時代を漫然と生きるなら、
社会主義も共産主義も、同じものだと思ってしまっていいんです。


じゃあ、どうして世界史では、区別しないといけないかというと、


「私はこれとは違う!」って主張した人物が現れて、世界を大きく動かすからです。


例えば、マルクスです。
これまでの社会主義者を「空想的」と呼んで、「自分とは違う」と主張してます。

マルクスの主張がいかに画期的か、に着目すると、
マルクスより前と後を「区別」する必要があるでしょう。



次に現れたレーニンも、これまでとの違いを主張します。
だいたい、社会党も労働党も、
マルクスの影響を受けているところは、
共産党と同じです。

だから、共産党だって、「似たもの」ではあります。

でも、レーニンは
「私はお前たちとは違う」
と言って、わざわざ「共産党」を作ります。


そんなレーニンの主張を、ちゃんと理解しようと思ったら、
これまでの社会党と、レーニンの共産党を、
「区別」した方がいいでしょう。


実は、レーニンが現れる前にも、
「共産主義者」と呼ばれる人たちは存在しています。
でも、世間からは、社会主義者とほとんど同じだ、と考えられていました。
わざわざ区別する意味が、あんまりなかったのです。

けれどレーニンが、全然違うものとして、「ロシア共産党」を作った時に、
「区別」をする意味が出てきます。



このように、社会主義と共産主義は、
時代によって、少しずつ意味が変わります。

もし、全部を丁寧に見ていったら、
ひとりひとりの主張は微妙に違うんです。
なんなら、同じ人の主張でも、
若い頃と死ぬ前じゃ、微妙に違ってると思います。

でも、ざっくり見ると、
皆の主張はだいたい同じです。
「格差を無くそう!」って感じ。
「資本主義に反対!」それだけです。



どっちでもいいんです
あなたが、細かく区別したければ、
ちゃんと調べて、一人一人の主張の違いを「区別」したらいいし、

あなたが、大体でいいって言うなら、
「格差をなくす系の主張」って、ひとくくりにしてしまっていいと思います。



ただし、世界史の先生としては、

マルクスとレーニンの唱えたものは、
その後の社会を大きく動かしているので

マルクスの前と後
レーニンの前と後

ここで「区別」することをお勧めしている
というわけです。

  • 人はすべてを、区別で認識する
  • 区別が必要かどうかは、自分で判断できる


この意味、わかっていただけましたか?

この世は、区別が大事なのです。

と言うことは、区別する必要がないときは、
だいたい同じものだ、って思ってしまっていい
のです。


私は、これが世界史を勉強するコツだと思います。



用語を「全部違うものだ」と思ってしまうと、覚える用語は何百、何千です。

例えるなら、
色や形の違うレゴブロックが、目の前にぐちゃぐちゃにおいてあるようなものです。


でも、似た構造や文化を
「だいたい同じものだ」と分類してしまえば、ずいぶん整理されるでしょう。

レゴブロックを仕分けるときも、
まずは、同じ色か形のグループに分類してしまった方が、見つけやすいですよね。


私は、世界史をただ、いちから暗記するのは、非効率だと思います。

むしろ、大雑把に理解して、
ここは、区別する必要があるな」ってところを見つけて、
そこだけちゃんと覚えれば、問題ないと思います。

特に、共通テスト対策には。


「区別」するポイントがどこなのかは、
このブログで、解説していこうと思うので、
ぜひ、いろんな記事を読みながら、
ポイントを見つける目を、磨いていってくださいね。


世界史の説明は、そのうち、一つのページにまとめる予定です。
わからない単語があれば、ぜひ色々と読んでみてくださいね。

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